確率ロボティクス第4回: 連続値と多変量(その3)

千葉工業大学 上田 隆一


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確率ロボティクス第4回(その3)

今回の内容

  • 多変量ガウス分布
  • 多変量ガウス分布の演算
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多変量ガウス分布

  • ガウス分布に従う変数をまとめて1つの多次元のガウス分布で表せる
  • 式をまず見せます
      • ここで
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分散共分散行列

  • 前ページの: 各変数の分散と共分散を組み合わせた行列
  • 普通に話す時は「共分散行列」でよい
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例: 移動ロボットの実験

  • 実験で得られたデータのうち、について多変量ガウス分布(2次元ガウス分布)に当てはめてみましょう
  • 20試行分のデータ
    • 1列目: [m]、2列目: [m]
  • 計算すべきパラメータ
    • それぞれの平均値と分散
    • の共分散
      • データからの共分散の計算方法:
        • 個のデータのペアに対して
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計算結果

  • datamashを使った例
### 平均値 ###
$ cat xy_data.txt | tr ' ' \\t | datamash mean 1 mean 2
3.8822	0.51035
### 分散 ###
$ cat xy_data.txt | tr ' ' \\t | datamash svar 1 svar 2
0.016455957894737	0.19727097631579
### 共分散 ###
$ cat xy_data.txt |tr ' ' \\t | datamash scov 1:2
-0.029138231578947
  • これらの値からガウス分布の式を書きましょう
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答え

  • 式はわかったけど解釈がよくわからない
    • グラフを描いてみましょう
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2変量ガウス分布の描画

  • とりあえず中心からマハラノビス距離になる箇所を描いてみましょう
    • マハラノビス距離:
      • 1次元のものと比較を
  • 図形は楕円に
    • 楕円の式:
      • の部分を多項式にすると同じ形に(次のページから検証)
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とりあえず対角化

  • 次のようにを分解
      • : 回転行列
      • : 対角行列
  • このとき



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座標変換

  • 前ページ最後の式:
  • 次を代入すると となる
  • したがって
    • マハラノビス距離がになる点の描く図形:
      -座標系でを満たす楕円
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座標を戻す

  • -座標系でを満たす楕円を-座標系に
  • だけ回転してだけ移動

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実際の値で描画


  • degdeg
  • 右図: の楕円を描画
    • 誤差楕円と呼ばれる
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多変量ガウス分布の演算

  • 再生性はあるのか
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再生性・線形変換

  • 例1: のとき、の分布は?
    • は独立
    • 答え(1次元のときから類推して書いてみましょう):
    • 詳解確率ロボティクスに導出例あり
  • 例2: のとき、の分布は?
    • 答え(これは次のページで扱います):
        • : この形はよく出てくる
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ガウス分布の線形変換

  • の座標系からの座標系に変換するとき、空間がだけ引き伸ばされる[杉浦1985]
    • 下図の緑色の部分の面積比が
      • 補足: の行列式の絶対値
        と書くとややこしいのでこう表記)

        (画像: CC0)
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ガウス分布の線形変換(続き)

  • 空間が引き伸ばされると密度はだけ薄まる


      • 指数部の外にあるについて
      • 指数部の括弧内

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多変量ガウス分布の積

  • 問題:
    はどんな分布になるか
  • 講義の後半に出てくる形
    • 解き方: ひたすら式変形
    • 後半のための要望: に組み入れないで
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多変量ガウス分布の積(解答)

  • まず展開を数式にして整理


      • ここでは指数部にをかけたもの
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多変量ガウス分布の積(解答・つづき)

  • を整理


      • と関係のない項
  • 、共分散行列が対称行列という性質を使うと


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多変量ガウス分布の積(解答・つづき)

  • 前ページ最後の行について、次のようにおく


  • を指数部に戻す


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多変量ガウス分布の積(まとめ)

  • 問題: はどんな分布になるか
  • 答え:

ということでガウス分布になる(どう使うかは講義の後半に期待)

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多変量ガウス分布のまとめ

  • 多変量ガウス分布(多次元ガウス分布)を導入
    • パラメータは平均と分散共分散行列
    • シグマ範囲を囲うと楕円に
    • 1次元のガウス分布で見た性質を受け継いでいる
  • (最近はどんな分野でも)論文に山ほど出てくるので慣れておくとよい
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